学術論文なんて事業になるの? ~オープン・アクセス学術誌立ち上げ記(1)~

■2014年05月29日

 

弊社では、2012年の冬に「Science Postprint」という総合科学学術誌を立ち上げました。この連載では、私が学術論文誌を立ち上げ、事業化していくまでの道のりを公開していきます。 初回は、簡単に事業の背景の説明にかえて、よく私が聞かれる質問である、「学術論文なんて事業になるの?」という質問に回答したいと思います。

 

学術論文誌のビジネスモデル

学術論文誌は、「Nature」や「Science」が有名で一度は聞いたことがあるかもしれませんが、学者が査読という論文審査を行い、承認されたものだけが出版される雑誌です。従来は紙面での発行が中心でしたが、オンライン化が進み、ほぼ全ての学術誌がインターネットで購読できます。しかし、購読するには購読料や年会費を支払わなければならない仕組みになっている雑誌が多く、まだ半数以上は購読料モデルでの論文出版となっています。 一方、新たな仕組みとして、「オープン・アクセス出版」が広がってきています。医学・生命科学全般の分野ではPLoS Oneとその姉妹誌が普及してきていますが、それが代表例です。

 

日本に総合科学学術誌はない?

さて、ここからが本題ですが、NatureもScienceもPLoSも、どれもこれも欧米のものです。学術論文を見渡すと、どれもこれも欧米のものばかりです。「学術論文なら日本の学会も発行してるよ」というご意見をいただきますが、そもそも学会は分野が限定的で、NatureやScienceやPLoSのように総合的に科学全般を扱うものではありません。また、確かに学術誌は出していますが、内実は欧米の出版社のインフラを利用していて、欧米の学術情報システムに頼りっきりなんです。例えば、日本癌学会の「Cancer Science」はワイリー社のシステムですし、日本癌治療学会の「International Journal of Clinical Oncology」はSpringer社のシステムです。日本分子生物学会の「Genes to Cells」もワイリー社です。多くの学会は海外のシステムを利用して、海外の会社にお金を払っているのが現状です。

 

大きな使命と大きな市場機会

上述の金額は、購読料も合わせると、海外に流れる学術論文費用は1,000億円ぐらいになるのではないかと考えられます。平成25年度の科研費の総額が約1,581億円だったので、相当の金額です!1,000億円ものお金が動いているのに、日本には学会しかなくて、会社として広い分野の科学を対象とした国際的学術論文を事業化している会社が1社もないのです。(もしあったらごめんなさい。調査不足です。)これが、「学術論文なんて事業になるの?」の答えで、「むしろビッグビジネスになります。」が答えです。もちろん、稼ぐのが目的ではなくて、科学を発展させることが学術論文の使命です。ビッグビジネスになるから、その資金とインフラを活かして科学の発展に貢献できる。これが私達の目指すところです。 なぜ1社もなかったか?これまで日本の学術会は欧米の仕組みに組み込まれて何も疑問を持たず、学術論文なんて、科学にとっては水みたいなもので、当たり前すぎて誰も考えなかったのだと思います。しかし、この当たり前な水も、よくよく考えてみると改善の余地がたくさんありました。日本とアジア地域の活性化にも繋がる、情報インフラにも成り得ます。ですので、私たちゼネラルヘルスケア株式会社では、2012年の冬に、日本発、アジア発の学術インフラを構築するべく、総合科学学術誌「Science Postprint」を立ち上げることにしました。 次回は、私の自己紹介と、学術論文を事業にしようと思ったきっかけの出来事をお話します。お楽しみに!(予定はその時の都合で変更になるかもしれません。)

転載元: JMマガジン
http://job-medley.com/magazine/

 

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著者情報

竹澤慎一郎
ゼネラルヘルスケア株式会社 代表取締役。農学博士。2003年東京大学大学院博士課程修了後、2年間の研究職を経て、2005年に経営コンサルティング会社に就職。生命科学者向け情報サービスを手がけるバイオインパクト株式会社を共同創業後、2007年医療・ヘルスケア分野の総合マーケティング支援を目指したゼネラルヘルスケア株式会社を創業。現在に至る。




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