<ドクターエディ・ラボ> インパクト・ファクターの発展と衰退

■2014年07月22日


 

アカデミック・コミュニケーションの教授Dr. Eddyが、医学論文のジャーナル投稿に関連したトピックをやさしく解説するドクターエディ・ラボ。第12回目は、「インパクト・ファクターの発展と衰退」について説明します。
<ドクターエディ・ラボ> インパクト・ファクターの発展と衰退 

 

出版業界と科学コミュニティで最も話題になるテーマの1つが、インパクト・ファクターです。毎年トーマス・ロイターがジャーナルに対して与えているインパクト・ファクターとは、前の2年の間にそのジャーナルに掲載された論文が、その年に引用された比率を平均したものです。

先月、トーマス・ロイターから、2013年の新しいインパクト・ファクターを掲載した待望のJournal Citation Reports (JCR)が発売されました。それによると、最新号のJCRには、83カ国、232分野にわたる、10,853のジャーナルが挙げられているということです。

初めてインパクト・ファクターを受けるジャーナルは379、引用に疑わしいところがあるということで付与が中止になったジャーナルは37ありました。中止になったジャーナルは2年後に再度評価を受け、JCRへの掲載の可否を判断されます。

ここでは、今回のJCRで注目を集める点をいくつか紹介しましょう。まず、過度の自誌引用や「相互引用(citation stacking)」を理由に、66のジャーナルが2013年の算出対象から除外されました。トーマス・ロイターによれば、インパクト・ファクターが上がったのは全ジャーナルの55%、下がったのは45% だということです。下がったジャーナルには例えば、掲載数では世界最大のPLoS ONEがあります。

PLoS ONEのインパクト・ファクターは2010年の4.4(論文掲載数6,749)から、2012年の3.7(論文掲載数23,468)へと、16%の下降でした。興味深いことに、出版業界には新しいJCRの詳細を議論している人がいるのに対し、ジャーナルと研究者の中には気にしていない人もいます。どうしてこういうことが起こるのでしょう?

研究者と出版業界の専門家は、インパクト・ファクターに対する批判が増えていることを十分承知しているのです。2012年、学術的評価のインパクト・ファクターへの依存を少なくするため、新しい構想が立ちあげられました。2012年12月サンフランシスコで開催されたアメリカ細胞生物学会年次大会に、学術誌の編集者と出版社が集まり、研究成果の質をどのように評価し、科学系論文をいかに引用するか、ということに関わる問題を議論しました。また、編集者も出版社も、個々の論文のインパクトとジャーナルの質が確実に一致させる方法を探したいという意見でした。この大会では、「研究評価に関するサンフランシスコ宣言(San Francisco Declaration on Research Assessment ;DORA))と称する提案の作成にこぎつくことができました。この提案は、主に、査読付きジャーナルに掲載された論文に関する慣習に注目しており、研究成果の質を評価する方法を向上させる手段を探そうとするものです。DORAで述べられているテーマは次の通りです。

  • ジャーナルのインパクト・ファクターのような、ジャーナルごとの尺度を廃止しなければならない
  • 研究の評価は、掲載されているジャーナルではなく、その研究自体の功績にもとづいて判断しなければならない
  • オンライン出版がもたらす機会を活用しなければならない(字数、画像、参考文献などへの不必要な制限を緩和し、重要性とインパクトについての新しい指標を探る、など)

DORAはこれらすべての点を満たす方法は提案していませんが、インパクト・ファクターに関する問題を解決し、問題克服への道を開こうとしていることは明らかです。個々の論文のインパクトを測ったり、研究者の貢献度を査定したり、研究者の昇進・雇用・資金提供を決定したりするのに、インパクト・ファクターを使うことには反対しています。DORAでは、5年間のインパクト・ファクター、EigenFactor、SCImago、h-index、編集・掲載の回数のように、ジャーナルの業績を明確に表している他の尺度の使用を勧めています。

DORAは世界中の学術コミュニティや科学コミュニティの多くから、肯定的な反応を得ています。8000人を超える個人と、300を超える団体が署名してくれました。署名してくれた人のうち、専門分野では人文科学が6%で科学が 94%、 出身ではヨーロッパ46.8%、南アメリカ8.9% 、アジア5.1% でした。

けれども、DORAがジャーナルや研究者のインパクトを査定する良い代替案もなく、インパクト・ファクターを厳しく批判しているのでは、という批判の声も上がっています。批判している人は、インパクト・ファクターは信頼性があったからこそ長く続いてきたのだという意見です。その信頼性をDORAは認めていないのですが。トーマス・ロイターは、DORAに対し声明を発表しました。その中で、インパクト・ファクターが個々の論文の質を測定していない、またそうすることを意図していないこと認める一方、各分野でのジャーナルの評価とインパクト・ファクターには相関があると述べています。


こちらは研究者とジャーナルのための情報ポータルEditage Insights(エディテージ・インサイト)にて掲載されているコンテンツです。Editage Insightsでは、論文の執筆と投稿に役立つ情報を掲載しております。ぜひチェックしてみてください!

Editage-insights-logo_2

 

**********************************************

会社概要
エディテージはカクタス・コミュニケーションズのサービスブランドです。
カクタス・コミュニケーションズ株式会社
〒100-0004 東京都千代田区大手町2-6-2 日本ビル10階
TEL:03-6868-3348  FAX:03-4496-4557
電話受付時間:月~金・・・11:00~24:00 土・・・12:30~21:30
英文校正エディテージ:http://www.editage.jp/
研究者のための情報ポータル Editage Insights(エディテージ・インサイト):http://www.editage.jp/insights/
 

論文不正・捏造・疑惑から研究者の身を守るサービス

■2014年07月14日

Meditser 2014 vol.1 page5

論文不正・捏造・疑惑から研究者の身を守るサービス

ゼネラルヘルスケア株式会社

論文捏造、大丈夫ですか?捏造防止サービスとは?

小保方晴子氏のSTAP細胞の論文発表は衝撃的でした。コンセプトとして、酸によるストレスが細胞を初期化するというのはとてもわかり易く、驚きの結果でした。しかしインターネットを中心に捏造の可能性が指摘されてから、様相が変わり、真偽のほどは未だわかりませんが、小保方氏が所属する理化学研究所や共同研究者は対応に追われ、再現性を確かめる追試や追加のプロトコル作り、記者会見など、本来は必要のない業務に追われることになりました。また、疑惑によるブランドイメージの失墜も想定され、科研費などの資金調達にも影響があるのではないかと心配する声もあります。1000億円の損失だというのは少し大袈裟かもしれませんが、そのような声もあるほどです。
研究者本人の研究倫理が最も重要ではありますが、問題が起きた時に共同研究者や研究機関は寝耳に水で、上記のような損失になってしまいました。そこで、共同研究者や研究機関が自らの身を守る手段として、研究者の新たなセキュリティーシステム、「捏防ver.1」が開発されました。これまで、論文の不正は主にテキストのチェックはソフトウェアなどにより提供されており、検討が可能でした。しかし、小保方氏の論文で指摘されたような画像についての不正の問題は、ソフトウェアなどで手軽にチェックできず、画像ソフトに熟練した細かなチェックにより指摘されていました。「捏防ver.1」では、主に医学や生命科学研究の画像による不正に着目し、画像のコピー&ペースト、画像の加工による不正をチェック致します。
共同研究を依頼されたときに、もしくは教え子が博士論文をまとめる前に、「捏防ver.1」を活用して不正やうっかりミスをチェックして防衛することをお勧めいたします。

2014-07-14_150014

捏防広告-01

学術論文事業を始めたきっかけ ~オープン・アクセス学術誌立ち上げ記(2)~

■2014年07月09日

 

2005年7月、ちょうど今ぐらいの季節でしたが、私は2年間務めたポスドクを辞め、経営コンサルティング会社に転職しました。ポスドクは5年間の期限付きで、遺伝子の転写制御の仕組みを研究していましたがその2年目のことです。グループリーダーという役職まで付けてもらっていたので、研究者としては比較的恵まれていたポジションでしたが、それを捨ててビジネスの世界に飛び込みました。

 

論文投稿の苦しみ

2003年の冬頃だったと思いますが、ずっと研究してきた成果として、Natureに投稿しました。
論文の投稿は誰でも出来ますが、アクセプトされて初めて論文として世の中に広まります。そのアクセプトに至る確率ですが、Natureはおよそ3%だと言われています。私の論文は、投稿から1週間以内にリジェクトされました。

論文の投稿は、同時に複数は投稿できないので、周囲の意見、とりわけ上司の意見を参考に、アクセプトされる可能性があり、かつ権威の高い投稿先を決定するのが一般的です。また、論文の投稿の様式というのは雑誌によって規定があります。リジェクトされた論文は、様式を整えて、必要なら追記して別の雑誌に投稿します。

私の論文は、2-3週間かけて文面を書き換えて、Scienceに投稿しました。残念ながら、こちらも1週間でリジェクトされました。次は、順番通りCellです。Cellはフルペーパーなので、Figureの数量を増やしたり、章立てを見なおしたりといった大改訂が必要となり、投稿準備に数週間を要しました。この時点で既に季節は春を迎えていました。

Cellへの投稿は、査読され、ネガティブコメントは多かったもののリバイズの機会まで辿り着きました。リバイズとは、コメントに対して、論文に適切な修正を加えて再提出するプロセスです。このプロセスに辿り着くということは、論文がアクセプトされる可能性が高くなったことを意味します。

この結果が来たのは既に初夏になっていました。そこから何としても論文を通したいと、追加実験を行うものの、狙ったデータが思い通りに出ません。客観的に見て、残念なことに私は手先が不器用で、その上レシピに忠実に行うのも得意ではありません。そんな実験スキルの低い私は、人並みのデータを出すために、人の何倍も実験が必要で日々疲弊していました。苦し紛れに論点を変え、結論をやや弱くして再提出しました。

 

失恋し、これからも研究者として進むのかを考えた

残念ながらCellへの再提出もリジェクトとなりました。Cellに投稿した日から半年、Natureに出してからは1年の時がかかっています。当時の私は、研究の本質は何も進歩しないにも関わらず、1年経っても論文が通らないという日々に葛藤していました。

「もうブランドジャーナルでなくて良いから論文として終わりにしたい」気を抜くとそんな弱音が出てしまう状態でした。
しかし、私の上司が選んだ次の投稿先は、Natureの姉妹誌、Nature Cell Biol.(NCB)でした。

そのNCBに投稿して査読の結果を待っている頃に、私は当時付き合っていた彼女へ失恋しました。失恋を契機に、改めて自分と向き合ってみると、研究自体は大好きだが、今後も実験生物学を続けていったとして、一線で活躍できるかということに不安がある自分に気づきました。そして、研究者として集中した日々よりも、研究を俯瞰して応援する事の方がもっと好きだと気づいたのです。

こうして、失恋を契機にとして研究者とは別の方向性を目指すことに決めました。(あのときの彼女、目を覚まさせてくれてありがとう!)

 

いつかNatureを買収してやる

NCBの査読結果はCellと同様に、ネガティブなリバイズ。数ヶ月の追加実験をして、再提出したもののリジェクトでした。2005年当時は、堀江 社長のライブドアがM&Aを繰り返していた絶好調の時期でしたが、私も「いつかNatureを買収してやる」と捨て台詞して、研究の世界を去りました。

長すぎる査読、論文を通さないための査読には膨大な時間が費やされ、本質的な研究はまったく進まない、論文のためのScience。そんなものはScienceではありません。論文の世界はもっと良く改善できるところが沢山あり、変化を求めている人も沢山います。Natureを買収すれば、それが出来るはず。

「いつかNatureを買収してやる」これは、そんな気持ちを込めての発言でした。その時は、自分が後にNatureのような総合科学学術誌を創刊するなどとは考えてもいませんでしたが、今私は学術論文をイノベーションする仕事を、Science Postprintによって実現しようとチャレンジしています。

転載元: JMマガジン
http://job-medley.com/magazine/

 

過去の記事

学術論文なんて事業になるの? ~オープン・アクセス学術誌立ち上げ記(1)~

 

著者情報

竹澤慎一郎
ゼネラルヘルスケア株式会社 代表取締役。農学博士。2003年東京大学大学院博士課程修了後、2年間の研究職を経て、2005年に経営コンサルティング会社に就職。生命科学者向け情報サービスを手がけるバイオインパクト株式会社を共同創業後、2007年医療・ヘルスケア分野の総合マーケティング支援を目指したゼネラルヘルスケア株式会社を創業。現在に至る。




Copyright 2008 GH Japan Inc., All rights reserved.