「オープンアクセスサミット2014」に行ってきました

■2014年10月29日

「オープンアクセスサミット2014」に行ってきました

image0102014年10月21日、SPARC JAPAN1が主催するオープンアクセスについてのセミナー「オープンアクセスサミット2014」が開催された。このセミナーは、米SPARCによる今年のオープンアクセスウィークのテーマ「Generation Open(オープン世代)」に合わせ、日本国内の様々な分野の「オープン世代」を紹介し、「オープン世代」を担う若手と学会を支える機関とを結びつけよう、という試みから開催されたものである。
今回公演した講師の方々は、それぞれの分野でオープンアクセスに関わる第一人者たちだ。

 

最初の講師は、岩崎秀雄さん。
岩崎さんは早稲田大学理工学術院の教授として生命科学の研究者を勤めるかたわら、現代造形作家としてバイオ・メディカルアートを発表してきた。
今回は研究者であり、美術家であるという立場から、表現者として科学、芸術という枠を超えたオープンな表現方法を考える「Alternativeな生命探求の場としてのバイオメディアアート」を発表した。
岩崎さんは海外の美術家とも活発に活動しており、その経験からラボにアトリエを取り入れたものや、逆にアトリエがラボ化している現象を伝える。
美術や学問は、もともと自然を表現することから出発したのであり、学問や美術に従事する者は、両者を同時並行的に反復し相互批判・相互参照しながら対峙し、メビウスの輪を生きていかなければならない、と岩崎さんは伝える。
岩崎さんは、これからのオープンアクセスの時代に生きる表現者としての研究者の姿を示してくれたのではないだろうか。

 

2番目の講師である山田俊幸さんは明治大学米沢嘉博記念図書館に勤務し、myrmecoleon名義でネット活動をし、ニコニコ学会β実行委員を勤めている。
山田さんはニコニコ動画や「論文ったー2」の発信者として、学術論文の二次発信について、発表した。
論文は普通の人でも面白い、という確信からネット活動を行っている山田さんは、受け手の視点から学術論文の見せ方やコンセプトを重視する。山田さんの考えた、論文を自動的につぶやく「論文ったー」は、現在ユーザーが何を求めているか“空気を読んで”紹介するサービスだ。
また、ニコニコ動画やニコニコ学会βの「研究100連発」、「研究したマッドネス」での学術論文がどのように受け入れられているかも発表してくれた。マッドネスにおける研究内容は主にモノ・サービスを作るものが多い。研究の発表者も様々で、プロの研究者から趣味で研究を行う人もいる。
この要因には、ニコニコ動画などのサービスにより、受け手と作り手の距離が近づいていることも理由に挙げられるだろう。最後に山田さんの言っていた「1億総研究者時代」も近いのかもしれない。

 

1157413_210267352471073_1295262840_n3番目に発表したのは、竹澤慎一郎さん。
竹澤さんはゼネラルヘルスケア株式会社の代表取締役であり、日本で初めてのオープンアクセスジャーナル、SPP(サイエンスポストプリント)の編集長でもある。
今回の発表では、経済的な面からオープンアクセスに深く関わるオープンアクセスジャーナルの可能性を語ってくれた。竹澤さん自身も東京大学の博士号をとっており、在学時から持っていた「自由に研究を発表したい」という思いからSPPを創設した。
日本の科学研究にかけるヒト・モノ・カネは世界屈指である。が、生産数は少ない。
これから発展していく日本とアジアにとって足りないものは学術論文である、と竹澤さんは指摘する。1.5兆とも2兆とも言われる学術論文市場の中で、アジアの市場は2050年には5000億にはなるはずである。
そうしたアジアのサイエンス情報のインフラを作ろうとしているSPPであるが、もちろん、明るい情報ばかりではない。まだ新しく作られたばかりの雑誌であるため、引用数も少なく、掲載論文自体も少ないのだ。
それでも、SPPは未来へと目を向ける。ドネーション(寄付金)や出版後査読、企業によるアワードなど、これまでの論文雑誌の枠を超えたオープン世代にふさわしいシステムを構築しようとしている。

 

4番目の駒井章治さんは奈良先端科学技術大学院大学に所属し、日本学術会議若手アカデミー委員会委員長を勤めている。
駒井さんはオープンアクセス化の進んでいく時代に、アカデミアが、いかに生き残っていくべきか、をアカデミアの側から報告する。
研究不正が叫ばれる昨今、研究者に対する規制をこれ以上きつくしても、研究不正はなくならないのではないか、と考えた駒井さんは、むしろ楽しく研究を続けていくにはどうすればいいかを考え始めた。
楽しく研究をしている先達の研究者を見ることができ、モチベーションを保てる「古き良き時代」は過ぎ去り、今のアカデミアでは、若き研究者たちは孤立している。そこで、横と繋がることの出来るネットワークを構築し、楽しく研究している人と接することによってモチベーションを見つける、そんなオープンなアカデミアの在り方を模索すべきである、駒井さんは提唱する。
現在、日本学術会議はネットネイティブの若手と盛んに交流したり、アジアの現状を知るために地域会議を開催したり、と研究者のためのより良い環境を作ろうとしている。

 

最後の発表者は堀川大樹さん。堀川さんは大学から給料を貰っていないフリー研究者として慶応大学に所属しながら、オンラインでの知の無料提供を活発に行っている。
今回は研究者という立場から情報をオープンにすることにより、どういったメリットを得ることが出来るかを発表してくれた。
研究者にとって活動をオープンアクセス化することは、活動に力を与えるものだ、と堀川さんは主張する。情報をオープンにすることにより、仲間や情報、寄付などの資金が集まりやすくなり、自らの行動がますます促進されるからだ。
その例として、堀川さんはアメリカのバイオハッカーや日本における自らのアカデミア外の活動を挙げる。例えば、堀川さんはニコニコ学会βに参加するために、クラウドファンディングによって移動費を調達したが、こうした資金調達ができた要因には日頃からブログ活動を活発に行っていたということが大きく関わっている。
このように研究者がオープンアクセスを活用することによって、より多くの人を研究の世界に巻き込み、オープンアクセス化のさらなる促進させることができるのではないかと、堀川さんは語った。

五人の発表は大興奮のうちに終わり、10分の休憩後には、再び座談会が行われたのだ。(編集部)

講師紹介

・岩崎秀雄
早稲田大学理工学術院教授、metaPhorest(生命美学プラットフォーム)世話人(http://metaphorest.net/)。

・山田俊幸
明治大学米沢嘉博記念図書館勤務、ニコニコ学会β実行委員(http://niconicogakkai.jp/info/)。

・竹澤慎一郎
ゼネラルヘルスケア株式会社代表取締役(http://www.ghjapan.jp/)、SPP編集長(http://www.spp-j.com/)。

・駒井章治
奈良先端科学技術大学院大学バイオサイエンス研究科准教授、日本学術会議若手アカデミー委員会委員長(http://www.scj.go.jp/)。

・堀川大樹
慶應義塾大学SFC研究所所属、フリーの研究者としてむしブロを運営。(http://horikawad.hatenadiary.com/

1 SPARCはScholarly Publishing and Academic Resources Coalition(国際学術情報流通基盤整備事業)の略称名。オープンアクセスの推進、学術情報流通の促進および情報発信力の強化に取り組んでおり、海外にもSPARC Europeなどが展開されている。

2 https://twitter.com/ronbuntter

次回「言いにくいところまで言いました!「オープン世代」座談会」

新しい学術論文誌が生まれた瞬間 ~オープン・アクセス学術誌立ち上げ記(3)~

■2014年08月15日

 

私に「学術論文をイノベーションする」という決意が固まったのが2012年10月1日ですが、今回はその当時の話を書きたいと思います。

私が経営するゼネラルヘルスケア株式会社は9月決算ですが、2012年9月の決算は過去最高の売上高となり利益も確保できていました。当時は、メディア事業が主力でした。独自のメディアを運営し、そのメディアを活用して、製薬メーカー、医療機器メーカーや試薬メーカー、食品メーカーなどの専門的なメーカーの広告、販促、広報などを支援するサービスを提供するというものです。特徴を打ち出すことが難しい分野だったこともあり、弊社の商材も差別化しきれているとはいえない状況でした。

日銭も稼げるものの、利益率は限定的で、大きな発展性は見込めず、ご飯は食べれてもその先はないと強く感じ始めていました。そんな背景のなか、私自身が何のために研究職を辞めて起業の道を選んだのかを改めて考えました。私には前回の投稿にあるような、「論文の世界はもっと良く改善できるところが沢山ある」という原体験があります。事業が回り出し、人並みの生活が出来るようになったタイミングでいよいよ、論文の世界をもっと良く出来ないかを研究者の友人とディスカッションする時間を意識的に作ったのです。

 

研究者とのディスカッション

学術論文の仕組みについて、私達が見つけた問題点は下記のようなものです。

1. スピードが遅い
一旦論文を提出すると、editorやreviewerから膨大なデータ量を要求されます。本質的に重要なデータは当然必要になるのですが、正直言って本質的でない瑣末な問題や様々な角度からの証明などを要求されます。そういったデータを増やすことは、発見の本質的な証明にはつながるどころか、本質的な証明への研究時間を奪うものだと私は考えます。

度重なるreviseに時間がかかることは、先の記事に書いた通りです。有名ジャーナルに掲載されていてもさほど引用されない論文が多い理由は、reviseを繰り返すうちに、研究のタイムリーさがなくなってしまうためではないでしょうか。

様々な角度からのデータをとると、仮説に合致しないデータが出てくることもしばしばあります。仮説が間違っている場合ももちろんありますが、多くの場合は、現時点で明らかになっていない実験上や生物学上の問題のせいで、仮説が間違っているわけではありません。しかし、すべての角度から辻褄の合うデータを要求されてしまうと、非現実的な実験条件を用いざるを得ないことがあるのです。ですから、データが膨大でかつ完全に整合性がとれていても、実際には再現性のない論文が沢山あります。このように、論文主張の正当性を高めないデータは害悪であるとも言えます。

2. 政治的側面が強すぎる
一般的にreviewerは3名いるのですが、論文査閲は3名のreviewerのうち一人反対でも場合によっては落とされてしまう仕組みになっています。そして、必ずといっていいほど、大御所の先生や、その流派の人たちが1名は含まれます。

そういう背景から、データ吟味ではなく「定説と違う」という反論を受けてしまいます。要するに、世間の流れと違う主張、大御所の意見と違う主張を論文にすることは難しいということです。逆に、間違った主張が流行のように一人歩きすることが往々にしてあります。SIRTが長寿に関係する、などがわかりやすい例です。

そしてreviewerに当たりそうな大御所の先生の文献を引用していないと、論文が落とされてしまう恐れがあるため、複数の大御所の先生の文献を引用してしまいます。そうなると、実際に参考にしていて役に立った論文(マイナーな雑誌や研究者)を引用できないということも起きてしまうのです。

さらに、同業者がreviewerのため、近い内容のデータを真似されたり、情報がreviewerの仲良しグループに出回ったりすることも少なくありません。そうなると、弱小研究者が大きな発見を掲載するためには、大御所の先生を共著に入れて味方につけるとか、同業者と特別な親交を築くなど科学以外の要素が必要になります。

3. 体裁の重要性が高すぎる
論文構成は、Fig1をどのデータから始めるか、イントロには何を強調して書くか、何は書かないでおくかなど、reviewer対策中心に進んでいきます。

トップジャーナルに載せるこつは、膨大で良質なデータを載せつつも、面白い結論をあえて明言しないことだと言われています。なぜなら、科学者とはいえ人ですので、あまり面白いことを書くと嫉妬されて落とされることもあるからです。

これだと、分野の違う人には面白さが伝わりにくくなってしまいます。実際、natureの本文やタイトルを読んでも何が面白いかわからず、news&viewsの紹介文ではじめてよくわかるという方も多いのではないでしょうか。

 

新しい学術論文誌が生まれた瞬間

少し長くなりましたが、「同業者同士が匿名でreviewするというシステムでは、公正な審査は難しい」ということがハッキリと見えてきたのです。そこで、公正な審査を実現することを最初のコンセプトとし、プロジェクトがスタートしました。

・出るはずのない綺麗なデータは不要。新奇性があればOKとする
・査読者もそれを前提で査読し、専門的見地で気になる点をコメントする
・査読者は実名で行う

こうすれば、大御所の先生の定説以外でもacceptされ、本質的でないデータ作成に時間を割かなくてすむようになります。「こういう学術誌を作りたい」と具体的なアイディアに辿り着いたときが、新しい学術誌が生まれる瞬間でした。

 

転載元: JMマガジン
http://job-medley.com/magazine/

 

過去の記事

学術論文なんて事業になるの? ~オープン・アクセス学術誌立ち上げ記(1)~

学術論文事業を始めたきっかけ ~オープン・アクセス学術誌立ち上げ記(2)~

 

著者情報

竹澤慎一郎
ゼネラルヘルスケア株式会社 代表取締役。農学博士。2003年東京大学大学院博士課程修了後、2年間の研究職を経て、2005年に経営コンサルティング会社に就職。生命科学者向け情報サービスを手がけるバイオインパクト株式会社を共同創業後、2007年医療・ヘルスケア分野の総合マーケティング支援を目指したゼネラルヘルスケア株式会社を創業。現在に至る。


<ドクターエディ・ラボ>査読コメントへの返答でやっていいこと、だめなこと

■2014年08月05日


 

アカデミック・コミュニケーションの教授Dr. Eddyが、医学論文のジャーナル投稿に関連したトピックをやさしく解説するドクターエディ・ラボ。第13回目は、「査読コメントへの返答でやっていいこと、だめなこと」について説明します。
<ドクターエディ・ラボ>査読コメントへの返答でやっていいこと、だめなこと 

 

査読コメントに対処するのは、非常に熟練した著者であっても困難な仕事です。時には長々としたコメントで、著者が取り組まなければならない点を正確にねらい定めるのが難しいこともあるでしょう。いったん査読コメントを受け取ったら、よく注意して数回繰り返し読みます。

最初に読んだときは、査読者が自分の研究を正確に理解していないとか、無理な注文を付けていると感じるかもしれません。気分を害することもあるかもしれません。そのように感じたなら、そんな気持ちのままコメントへの回答を書くよりも、じっくりと構えてみることが大切です。数日後にコメントを何回か読みなおしてみましょう。

客観的な目で読んでいるうちに、査読者の視点を別の角度から読み取ることができ、やがて、どうやってコメントに応えたらよいかが、はっきりとわかることでしょう。

まず、査読者の主な関心が何であるか、明らかにしましょう。例えば、主なコメントは用いられている方法論についてですか?

  • 査読者は、結果の解釈の仕方に疑問を抱いたのですか?
  • 自分の論証を裏づけるため論文に入れたほうがよい追加データはありますか?
  • 査読者の関心を明らかにできたら、回答の構成を始めましょう。

査読者のコメントが大きな段落で構成されていたら、いくつかのポイントに分割して、それぞれについて個別に対処しましょう。あるコメントについて複数の解釈が可能な場合は、回答の最初は、コメントを読んでどのように理解したか説明するところから始め、その後自分の主張を続けます。

次にあげるやっていいこと、ダメなことをおぼえておいてください。

やっていいこと

  • 共著者、あるいはあなたの研究をよく知っている仲間に相談しましょう。彼らとのブレインストーミングによって、査読者の複雑なコメントに対処する最善策が見つかるでしょう。
  • コメントの1つ1つに対し完全に回答すること。万が一、コメントで述べられているポイントが、すでに論文の中で扱われていたり、ある指摘がその研究の範囲を超えていると感じたりしたら、そのことも回答の中で述べてください。
  • 査読者のコメント・指摘に同意しない場合でも、回答では礼儀正しく。
  • 必要な場合はいつでも、文献を引用し、主張を裏づける補足的・未発表のデータを付加すること。
  • 再提出は迅速に。また、査読者の指摘にもとづき論文で変更した箇所は、明確に示しましょう。

ダメなこと

  • 一つ一つすべてのコメントに異議を唱えてはいけません。あなたが全面的には同意できないような小さな変更を、査読者が示唆していて、にもかかわらず従うことは簡単で、研究の価値がなくならない場合は、変更を取り入れると自分の主張を支持するのが楽になるかもしれません。
  • 査読者からのネガティヴなコメントを個人攻撃と受け止めてはいけません。中立的な立場でコメントを見て、回答に力を尽くしましょう。
  • 返答の手紙では “we completely disagree”といった表現は使わないように。 この記事のBox2で、重要なコメントに回答するための便利な表現リストを紹介しています。
  • オリジナルのデータ/ローデータを出すように、という査読者の要求は拒否しないこと。

査読後に論文がリジェクトされる場合に備えたり、査読者のコメントが回答できないくらい厳しそうに見える時、コメントに回答しないことにし、代わりに別のジャーナルへ投稿する場合も多いです。たとえそんなときでも、できる限りコメントに則して論文を修正した方が賢明です。そうすることで、別のジャーナルに引き続き投稿するとき、受諾される可能性が高くなるからです。
以上のアドバイスがお役に立てば幸いです。
みなさんは、査読コメントで一番回答しにくいのは、どんなタイプの質問ですか??


こちらは研究者とジャーナルのための情報ポータルEditage Insights(エディテージ・インサイト)にて掲載されているコンテンツです。Editage Insightsでは、論文の執筆と投稿に役立つ情報を掲載しております。ぜひチェックしてみてください!

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